タデイ・ポガチャルが2026年ツール・ド・フランスで使用するコルナゴ「Y1RS」の実測重量は、7.25kgだった。
UCI最低重量の6.8kgより約450g重い。
「世界最高峰の機材なのに、最低重量まで落とせなかったのか」
数字だけを見れば、そう感じるかもしれない。しかし、ロードバイクの速さを完成車重量だけで判断するのは、寿司をシャリの重さだけで評価するようなものだ。大事なところを丸ごと見落としている。
実際のロードレースには登りだけでなく、平坦、下り、横風、コーナー、集団内での加減速がある。さらに、バイクの空気抵抗だけでなく、選手の乗車姿勢、タイヤの転がり抵抗、ホイールの横風安定性までフィニッシュタイムに影響する。
つまり、注目すべきは「なぜ7.25kgもあるのか」ではない。
なぜポガチャル陣営は、7.25kgでもY1RSを選ぶのか。

その答えは、重量、空力、操作性、タイヤ、ポジションを一つのシステムとして考えると見えてくる。
【ワイズロードオンライン】本記事の数値と仕様は、提示された実測・取材情報をもとに整理している。市販品とプロ用カスタム品では、仕様が異なる可能性がある。
ポガチャルのY1RS主要スペック
| 項目 | ポガチャル仕様 |
|---|---|
| フレーム | Colnago Y1RS |
| サイズ | 54cm |
| 仕上げ | 生カーボンを生かした軽量仕様 |
| 実測重量 | 7.25kg |
| 2025年仕様の実測重量 | 7.57kg |
| コンポーネント | Shimano DURA-ACE Di2 R9200 |
| チェーンリング | Carbon-Ti |
| パワーメーター | Shimano DURA-ACE |
| ペダル | Shimano DURA-ACE |
| ボトムブラケット | Bikone BSE Road Ceramic Aero UAE仕様 |
| BB重量 | 77g |
| ホイール | ENVE SES 4.5 Pro |
| リム構造 | ミニフック |
| リム内幅 | 23.5mm |
| タイヤ | Continental GP5000 TT TR 28C |
| タイヤ実測幅 | 前31.6mm/後30.8mm |
| ハンドル幅 | ブラケット部36cm/ドロップ部40cm |
| サドル | fi’zi:k Argo Adaptive カスタム3Dプリント |
| ボトルケージ | Elite Leggero Carbon、1個13g |
この一覧だけを見ると、軽量パーツの寄せ集めに思えるかもしれない。しかし実際には、各部品が単独で選ばれているわけではない。
Y1RSの空力特性を維持しながら、必要な剛性と操作性を残し、余計な重量を細部から削っている。狙っているのは最軽量賞ではなく、レース全体の所要時間を短くすることだ。
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実測7.25kgは本当に重いのか
6.8kgとの差は約450g
Y1RSの実測重量7.25kgと、UCI最低重量6.8kgの差は次のとおりだ。
| 比較項目 | 重量 |
|---|---|
| ポガチャルのY1RS | 7.25kg |
| UCI最低重量 | 6.80kg |
| 差 | 0.45kg |
| 最低重量に対する差 | 約6.6% |
バイク単体で見れば、450gは小さくない。
ただし、登坂性能に影響するのはバイク単体ではなく、選手と装備を含めたシステム全体の重量だ。
仮に以下の条件で考えてみよう。
- 選手:66kg
- バイク:7.25kg
- ヘルメット、シューズ、ボトルなど:2kg
- システム総重量:75.25kg
この場合、450gが占める割合は約0.60%にすぎない。
もちろん、450gが無意味という話ではない。一定出力、急勾配、低速、無風という条件なら、重量差は登坂タイムへ確実に影響する。
しかし、ステージ全体には平坦も下りもある。速度が上がれば空気抵抗の影響が急激に大きくなり、重量差の相対的な重要性は下がっていく。
「450g重いから遅い」と即決するのは簡単だが、簡単な結論ほどだいたい雑だ。
2025年仕様から約320g軽量化

2025年に計測された塗装あり仕様が7.57kgだったとすると、2026年仕様は約320g軽くなっている。
| 年・仕様 | 実測重量 | 差 |
|---|---|---|
| 2025年・塗装ありY1RS | 7.57kg | — |
| 2026年・生カーボン仕様 | 7.25kg | −320g |
| 軽量化率 | — | 約4.2% |
エアロロードで320gを削るのは簡単ではない。
Y1RSには、空気抵抗を抑えるための複雑なチューブ形状、専用フォーク、独特なコックピットが採用されている。これらを維持しながら軽量化するには、構造剛性や耐久性を損なわない範囲で材料と部品を詰め直さなければならない。
軽量フレームをさらに軽くするのとは、話が違う。
エアロ形状を残したまま320gを落とすのは、鎧を着たままダイエットするようなものだ。脱げば簡単だが、それでは戦えない。
生カーボン仕様は「空力のために使った重量」を回収する手段

塗装を省くことにも意味がある
ポガチャルのY1RSは、カーボン地肌を生かした仕上げを採用している。
ロードバイクの塗装には、下地、カラー、ロゴ、クリア層などが含まれる。その重量はフレームサイズ、デザイン、塗装面積、仕上げ方によって異なるため、「生カーボン化で必ず何g軽くなる」とは断定できない。
ただし、表面積の大きいエアロフレームでは、塗装を最小限にすることが追加重量を抑える有効な方法になる。
ここで注意したいのは、前年からの320gをすべて塗装だけで削ったとは限らないことだ。
- フレーム仕上げ
- チェーンリング
- ボルト類
- ボトムブラケット
- ボトルケージ
- その他の小物類
こうした細かな変更を積み重ねた結果と考えるほうが自然である。
見た目より機能を優先した仕上げ
生カーボン仕様の目的は、Y1RSを軽量クライミングバイクへ変えることではない。
Y1RSの空力形状を残したまま、走行性能へ直接寄与しにくい重量を削ることにある。
つまり、生カーボン仕上げはデザイン上の演出ではなく、空力性能のために使った重量を別の部分で回収する手段だ。
黒くて格好いいのは結果であって、目的ではない。ファッション誌なら「精悍なカーボン柄」で話は終わるが、機材記事なら、その裏で何gを取り戻したのかを考えなければならない。
なぜ軽量なV5RSではなくY1RSなのか

山岳ステージは登坂だけではない
コルナゴには、軽量オールラウンドモデルのV5RSも存在する。
それでもY1RSを選ぶ合理性として考えられるのが、ステージ全体で得られる空力的な利益だ。
純粋な登坂だけを比較すれば、軽いバイクが有利になる。特に、次の条件では重量差の重要性が高まる。
- 勾配が厳しい
- 走行速度が低い
- 登坂時間が長い
- 空気抵抗の割合が小さい
- 頻繁な加速が必要
一方、高速の平坦区間や下りでは、空気抵抗が主要な抵抗になる。
空力に必要なパワーは、簡略化すると次の式で表せる。
[
P_{\mathrm{aero}}=\frac{1}{2}\rho C_dA v^3
]
- (\rho):空気密度
- (C_dA):空気抵抗係数と前面投影面積の積
- (v):対気速度
重要なのは、空力抵抗に打ち勝つためのパワーが速度の3乗に比例する点だ。
速度が2倍になれば、必要な空力パワーは単純計算で8倍になる。したがって、40〜50km/hへ達する区間では、数百gの重量差より、わずかなCdAの差が大きな意味を持つ可能性がある。
重量と空力が効く場面は異なる
| 走行条件 | 重量の影響 | 空力の影響 |
|---|---|---|
| 急勾配・低速登坂 | 大きい | 比較的小さい |
| 緩斜面・高速登坂 | 中程度 | 大きくなる |
| 平坦高速走行 | 小さい | 非常に大きい |
| 高速ダウンヒル | 小さい | 非常に大きい |
| コーナー後の再加速 | 大きい | 速度上昇とともに増加 |
| 横風区間 | 小さい | 安定性を含めて重要 |
だから、Y1RSとV5RSを「どちらが速いか」だけで比較することに意味はない。
V5RSは、軽量性、加速反応、長い登坂での効率を重視した選択肢になる。一方のY1RSは、高速巡航、下り、平坦、横風区間を含めた総合性能に軸足を置いている。
両車の関係は、優劣ではなく適性の違いだ。
重要なのはステージ全体のフィニッシュタイム
山岳ステージだから軽量バイク、平坦だからエアロロード、という区分も単純すぎる。
現代のグランツールでは、山岳ステージでも登りに入るまでの高速区間が長い。頂上ゴールでなければ、下りや平坦での速度維持能力も結果を左右する。
仮に登りで数秒失っても、平坦と下りでそれ以上を回収できれば、ステージ全体ではY1RSのほうが速い。
もちろん、チームの比較データが公開されていない以上、「Y1RSが何ワット、何秒有利」と断定することはできない。
だが、ポガチャル陣営が7.25kgのY1RSを選んでいる事実は、少なくとも重量だけを評価軸にしていないことを示している。
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ENVE SES 4.5 Proが狙う空力と安定性の両立

ホイールはリムハイトだけでは評価できない
ホイールにはENVE SES 4.5 Proが採用されている。
このクラスのホイールに求められるのは、単純な軽さではない。
- 高速域での空気抵抗
- 横風を受けた際の安定性
- リム重量
- タイヤとの空力的なつながり
- ブレーキングやコーナリング時の剛性
- チューブレス運用の確実性
これらを総合的に成立させる必要がある。
風洞内で抗力が小さくても、横風でフロントホイールが振られ、選手が上体を起こせば意味がない。ライダーの姿勢が崩れることで、ホイール単体が稼いだ空力的な利益が吹き飛ぶ可能性がある。
ディープリムは深ければ深いほど偉い、というものではない。
それなら前後とも円盤にすれば終わりだ。横風が来た瞬間、選手ごとフランス国外へ輸出されるがな。
リム内幅23.5mmという選択
ポガチャル向けのENVE SES 4.5 Proは、内幅23.5mmのカスタム仕様とされている。標準仕様より1.5mm狭い点が特徴だ。
近年はワイドリム化が進んでいるが、内幅は広ければ広いほど速いわけではない。
リム内幅を変更すると、同じタイヤでも次の項目が変化する。
- 装着後の実測幅
- タイヤの断面形状
- 空気量
- サイドウォールの支持性
- 推奨空気圧
- リム外幅とのつながり
タイヤがリムより大きく膨らみすぎると、タイヤとリムの境目で気流が乱れ、空力的に不利になる可能性がある。
内幅23.5mmという仕様は、タイヤ容積を確保しながら、実測幅とリム外幅の関係を調整する狙いがあると考えられる。
ただし、ポガチャル用カスタムホイールと市販モデルを完全に同一視してはいけない。プロ用機材は、同じ製品名でも細かな寸法や積層、仕上げが異なる場合がある。
ENVE ( エンヴィ ) ロードバイク用ホイール(ディスクブレーキ用) 24WS SES4.5 ENVE-INN D 100/142 前後セット シマノ11/12S
公称28Cが実測31mmを超える理由

公称サイズは完成寸法ではない
タイヤはContinental GP5000 TT TRの28Cだが、装着後の実測幅は次のようになっている。
| 位置 | 公称幅 | 実測幅 | 公称値との差 |
|---|---|---|---|
| フロント | 28mm | 31.6mm | +3.6mm |
| リア | 28mm | 30.8mm | +2.8mm |
フロントは公称値より約12.9%、リアは約10.0%太い。
これは異常ではない。タイヤの実測幅は、次の条件によって変化する。
- リム内幅
- ケーシング構造
- 空気圧
- 装着後の経過時間
- 製造公差
- 測定位置と測定方法
したがって、「28C」と書かれているから、装着後も28mmになるとは限らない。
現代のロードバイクでは、公称サイズだけでなく、実際に使用するホイールへ装着した状態で幅を測る必要がある。フレームクリアランスや空力を検討するなら、なおさらだ。
タイヤの横に「28」と書いてあるから28mmだと思うのは、選手名鑑に身長180cmとあるから、ヘルメットをかぶっても180cmだと思うようなものだ。
なぜフロントのほうが太いのか
今回の数値では、フロント31.6mm、リア30.8mmとなり、フロントが0.8mm太い。
ただし、この差が意図的なセッティングによるものか、個体差や空気圧、測定条件によるものかは断定できない。
一般論として、前後タイヤには異なる役割がある。
フロントタイヤは、操舵、制動、コーナリンググリップに強く影響する。リアタイヤは、駆動力を路面へ伝え、より大きな荷重を受け持つ。
そのため、実戦では前後の幅や空気圧を別々に調整することがある。重要なのは「どちらが太いか」だけでなく、選手の前後荷重、路面、空気圧と合わせて評価することだ。
太いタイヤは空力的に不利なのか
タイヤが太くなると前面投影面積が増えるため、単純には空気抵抗が増える可能性がある。
一方、適切な幅と空気圧を選べば、次のメリットが期待できる。
- 接地面の安定
- コーナリンググリップの向上
- 振動損失の低減
- 荒れた路面での速度維持
- 低圧化による快適性向上
高圧の細いタイヤが荒れた路面で跳ねれば、前進に使うはずのエネルギーが車体と選手の上下動へ逃げる。太いタイヤが常に速いわけではないが、実路面では転がり抵抗と振動損失を分けて考える必要がある。
結局、タイヤは「28Cだから速い」「32mmだから遅い」という話ではない。
タイヤ、リム、空気圧、路面、速度の組み合わせで決まる。
36cmハンドルと40cmドロップの狙い
空気抵抗の主役はライダー
ポガチャルのハンドルは、ブラケット部の中心間が36cm、ドロップ部が40cmとされている。
この幅の違いは、単なる好みではない。
ロードバイクでは、ライダーがシステム全体の空気抵抗の大部分を占める。腕と肩を内側へ収めれば、前面投影面積を縮小しやすい。
フレームチューブを数mm薄くするより、腕の位置を数cm変えるほうが大きな効果を生む可能性もある。
ただし、狭いハンドルにはデメリットもある。
- 呼吸が窮屈になる
- 肩や首への負担が増える
- ダンシング時の安定性が変わる
- 高速コーナーでの操作性が低下する可能性がある
- スプリント時のレバレッジが小さくなる
空力的に優れていても、選手が長時間維持できなければ意味がない。速い姿勢を5分しか保てないなら、それはポジションではなく一発芸だ。
ブラケット部36cm、ドロップ部40cmの使い分け
| 使用位置 | 幅 | 主な狙い |
|---|---|---|
| ブラケット部 | 36cm | 腕と肩を狭め、巡航時の前面投影面積を縮小 |
| ドロップ部 | 40cm | スプリント、下り、コーナーでの操作性を確保 |
ブラケットを握る時間の長い巡航時は、幅36cmによって空力を優先する。一方、ドロップ部は40cmまで広がり、スプリントや高速コーナーで必要な安定性を確保する。
つまり、常用域では空力、勝負どころではコントロール性を狙った構成だ。
内側へ傾けられたブレーキレバーも、手と前腕を内側へ収めるためと考えられる。ただし、「レバー傾き28cm」という表現は単位として不自然であり、誤訳や文字起こしミスの可能性が高い。元資料を確認できるまでは、具体的な角度として断定しないほうがよい。
DURA-ACEを軸に、細部から重量を削る
コンポーネントはShimano DURA-ACE Di2 R9200。パワーメーターとペダルもDURA-ACEで統一されている。
一方、チェーンリングにはCarbon-Tiが採用され、ジョッキーホイール周辺のボルトなどにも軽量パーツが投入されている。
こうした部品は、一つ交換しただけで劇的に軽くなるものではない。しかし、エアロフレームの構造を大きく変更できない以上、数gから数十gの削減を積み上げる意味はある。
ボトルケージには、1個13gのElite Leggero Carbonを採用。2個でも26gだ。通常品との差は小さくても、こうした選択を積み重ねることで、空力パッケージを保ったまま重量を詰められる。
77gのセラミックBBをどう評価するか
ボトムブラケットは、77gのBikone BSE Road Ceramic Aero UAE仕様とされている。
軽量性に加えて、ベアリングの摩擦低減を狙った製品だと考えられる。ただし、セラミックベアリングの効果は、単純に材質だけでは決まらない。
- 荷重
- 回転数
- シール抵抗
- 潤滑状態
- ベアリングの予圧
- フレーム側の精度
- 左右のアライメント
これらによって実際の損失は変化する。
「セラミックだから必ず数ワット速い」と断定するのは危険だ。ベアリングが高級でも、取り付け精度が悪ければ、ただの豪華なガラガラである。
3Dプリントサドルは空力ポジションを支える部品
サドルには、fi’zi:k Argo Adaptiveのカスタム3Dプリントモデルが採用されている。
3Dプリントサドルというと、柔らかさや快適性ばかりが注目される。しかし、プロにとっての役割はそれだけではない。
選手の骨盤形状、前傾角度、荷重分布に合わせて支持特性を調整できれば、攻撃的な前傾姿勢を長時間維持しやすくなる。
サドル上で骨盤が安定すると、次の効果が期待できる。
- ペダリング中の不要な前後移動を抑える
- 上体の位置を一定に保ちやすい
- 空力姿勢の再現性が高まる
- 局所的な圧迫や痛みを抑える
- 終盤まで出力を維持しやすくなる
つまりサドルは、単なる快適装備ではない。
出力伝達、ポジション、空力を支える重要部品だ。数十g軽いサドルでも、痛みで上体を起こしたら全部台なしになる。お尻が反乱を起こした瞬間、CdAも戦術もへったくれもない。
市販Y1RSとポガチャル仕様は同じではない
ポガチャルのバイクには、市販品と共通する製品名が並んでいる。
しかし、次のような要素を含めると、完成状態は一般的な市販車と大きく異なる可能性がある。
- 生カーボンを生かした特別仕上げ
- カスタム仕様のホイール
- 専用3Dプリントサドル
- 特殊なハンドルポジション
- 軽量チェーンリングやボルト
- 選手専用の組み付けと調整
市販のY1RSを購入しても、ポガチャル車と同じ7.25kgになるとは限らない。また、同じ36cmハンドルを取り付けても、同じ空力性能を得られるわけではない。
ポジションは、身長、肩幅、柔軟性、腕の長さ、出力特性によって変わる。
機材をコピーするより、その選択理由を理解するほうが重要だ。ハンドルだけ狭くしても、翌朝ポガチャルにはならない。そんなに簡単なら、表彰台が渋滞している。
一般ライダーが参考にできる4つのポイント
1.重量はシステム全体で考える
バイク単体で200g削るより、タイヤ、空気圧、ポジションを適正化したほうが、実走では大きな効果を得られる場合がある。
完成車重量だけでなく、選手を含めた総重量と走行条件で評価したい。
2.タイヤは装着後の実測幅を見る
公称28Cでも、ワイドリムへ装着すれば30mmを超える場合がある。
少なくとも次の4項目は確認したい。
- 装着後の実測幅
- リム内幅と外幅
- フレームクリアランス
- 実使用空気圧
広告を眺めるより、ノギスで一度測ったほうが話は早い。
3.ハンドル幅は空力だけで決めない
狭いハンドルには空力上のメリットが期待できるが、呼吸、肩の負担、ダンシング、高速走行時の操作性も確認する必要がある。
短時間の試乗ではなく、長時間走行や高出力時の再現性まで検証すべきだ。
4.軽さより速い状態を維持できるかを見る
速い姿勢を10分しか維持できないバイクより、わずかに重くても2時間維持できるバイクのほうが実戦では速い。
Y1RSから学ぶべきなのは、特定のパーツを買うことではない。重量、空力、タイヤ、操作性、フィッティングを一つのシステムとして考えることだ。
7.25kgのY1RSは妥協ではない
ポガチャルのY1RSは、UCI最低重量より約450g重い。
しかし、生カーボン仕上げによって余分な重量を削り、ENVE SES 4.5 Proと実測30mmを超えるタイヤで空力、転がり抵抗、グリップのバランスを取っている。
さらに、ブラケット部36cmのハンドルとカスタムサドルによって、ライダーを含めた空気抵抗と姿勢維持能力まで最適化している。
各要素の狙いを整理すると、次のようになる。
| 要素 | 主な狙い |
|---|---|
| 生カーボン仕上げ | 空力形状を残しながら追加重量を削減 |
| Y1RSフレーム | 高速域を含むステージ全体の空力効率 |
| 7.25kgの重量 | 剛性、耐久性、空力とのバランス |
| SES 4.5 Pro | 空力、重量、横風安定性の両立 |
| 実測30mm超のタイヤ | 転がり、グリップ、振動損失の最適化 |
| 36cmブラケット幅 | ライダーの前面投影面積を縮小 |
| 40cmドロップ幅 | スプリントと下りでの操作性確保 |
| 3Dプリントサドル | 骨盤支持と空力姿勢の維持 |
| 軽量小物類 | システム性能を崩さず重量を回収 |
このバイクは、体重計の上で勝つために作られているのではない。
コース上で勝つために作られている。
ロードバイクは、一番軽いパーツを順番に取り付ければ完成する福笑いではない。軽量化によって失うものと、空力や操作性によって得るものを計算し、選手が最後まで使い切れる状態にまとめる必要がある。
ポガチャルのY1RSが教えてくれる結論は明快だ。
最軽量が最速とは限らない。ゴールで時計を止めたとき、最も短いタイムを記録したシステムが速い。
7.25kgという数字だけを見て「重い」と騒ぐ前に、そのバイクがどこで時間を稼ぐのかを見たほうがいい。
体重計は勝敗を決めない。決めるのは、あくまでフィニッシュラインなのである。


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