エアロロードの新基準──「Cannondale SuperSix EVO LAB71」の空力性能を徹底検証

街中で一休みする華聯な女性 フレーム

ロードバイクの世界では、軽量化と空力性能のバランスが勝敗を左右する重要な要素となっている。従来、エアロロードは重量増とトレードオフの関係にあったが、近年の技術革新により、軽量かつエアロダイナミクスに優れたバイクが次々と登場している。

Cannondaleの新型SuperSix EVO LAB71は、その最前線に位置するモデルだ。従来のSuperSix EVOシリーズの軽量性を維持しながら、フレーム設計の最適化によってエアロ性能を大幅に向上させている。本稿では、CFD解析(数値流体力学シミュレーション)と風洞試験のデータをもとに、その技術的進化と実走行性能を詳細に検証する。


CFD解析と風洞試験によるエアロ性能の最適化

SuperSix EVO LAB71の開発において、Cannondaleは数百回に及ぶCFD解析を実施し、フレームの各部にかかる空気の流れを徹底的に分析した。特に着目したのは以下の3点だ。

Cannondale SuperSix EVO LAB71のヘッドチューブとステム接合部。
Deltaステアリングシステムが統合ケーブルルーティングを実現し、空力性能と美しさを向上。
HollowGram SystemBar採用で剛性とエアロダイナミクスを最適化。
Cannondale LAB71 SuperSix EVOのトップチューブとシートステー接合部。
LAB71グレードの超軽量カーボンを採用し、剛性と振動吸収性を最適化。
エアロプロファイル設計で空力性能を向上し、ヒルクライムとロードレースに最適化された次世代レーシングバイク。

1. ヘッドチューブ周辺の気流制御(フロント投影面積の縮小)

2. ダウンチューブとシートステーの空力最適化(後流の乱流削減)

3. ライダーを含めた実走行条件での流体挙動(リアルな空力データの取得)

これらの結果をもとにプロトタイプを製作し、風速40km/h・ヨー角(横風角度)0°〜15°の条件で風洞試験を実施。従来のSuperSix EVO Hi-MODと比較し、約5.6%の抗力削減が確認された。これは、40km/h巡航時に約12Wのパワーセーブに相当する数値だ(図1)。

図1:40km/h走行時の空気抵抗削減量

モデルCdA値((m²)40km/h時の空気抵抗削減量
SuperSix EVO LAB710.235-12W(従来比)
SuperSix EVO Hi-MOD0.249
SystemSix0.220+15W
Specialized Tarmac SL80.238-5W

SystemSixほどの極端なエアロ性能ではないが、Tarmac SL8よりも低いCdA値を記録しており、軽量オールラウンダーのカテゴリー内ではトップクラスの空力性能を誇る。


エアロ性能を支える3つの主要技術

SuperSix EVO LAB71では、以下の3つの革新的なデザイン変更が施されている。

1. Delta Steerer──フロント投影面積の縮小

SuperSix EVO LAB71の最大の特徴は、新設計の「Delta Steerer」にある。従来の円形ステアラーチューブを三角形に近い形状へと変更し、ヘッドチューブの横幅を削減。

Cannondale LAB71 SuperSix EVOのフレームセット。
超軽量カーボンモノコック設計で、空力性能を強化。
エアロフォークとカムテール形状を採用し、剛性と快適性を両立。
ヒルクライムからエンデュランスまで対応するハイエンドモデル。
Cannondale LAB71 SuperSix EVOのフレームセット。
超軽量カーボンモノコック設計で、空力性能を強化。
エアロフォークとカムテール形状を採用し、剛性と快適性を両立。
ヒルクライムからエンデュランスまで対応するハイエンドモデル。

この設計変更により得られるメリット:

✅ ヘッドチューブ周辺のCdAが3.2%低減

✅ ライダー周辺の気流がスムーズになり、横風耐性が向上

✅  風洞試験では、ヨー角10°以上での安定性が向上

特に、40km/h巡航時のフロント周りの気流剥離が明確に抑制され、ライダーの負担が軽減される点は、長距離走行や高速巡航で大きなアドバンテージとなる。


2. エアロシートポストとカムテール形状

Cannondaleは、シートチューブとシートポストの形状を見直し、カムテール形状を採用。

Cannondale LAB71 SuperSix EVOのトップチューブとシートステー接合部。
LAB71グレードの超軽量カーボンを採用し、剛性と振動吸収性を最適化。
エアロプロファイル設計で空力性能を向上し、ヒルクライムとロードレースに最適化された次世代レーシングバイク。
Cannondale LAB71 SuperSix EVOのフレームセット。
LAB71専用ハイモジュラスカーボン採用で超軽量化と剛性バランスを最適化。
カムテール形状のエアロプロファイルが空力性能を向上し、統合シートポストが振動吸収性を強化。

✅ 後流の渦を抑え、横風時の安定性を向上

✅ トップチューブとの接合部のスムーズ化により、気流の剥離を防止

✅ SystemSixと比較して横風耐性が約12%向上

特に、横風時のフレーム挙動が改善されている点が、エアロ性能向上の大きなポイントだ。これは集団走行やクリテリウムレースでのバイクコントロールにも好影響を与える。


3. フル内装ケーブルルーティング──空力ロスの最小化

フル内装化されたSAVE SystemBarを採用することで、ハンドル周辺のケーブルを完全にフレーム内部へと収納。

この画像はCannondale SuperSix EVOのフロントフォークとヘッドチューブ接合部。
カムテール形状のエアロフォークが空力性能を強化し、統合型ケーブルルーティングがクリーンなデザインと剛性を最適化。
ワイドタイヤクリアランスにより快適性とトラクション向上。
Cannondale SuperSix EVO LAB71の完成車。
ハイモジュラスカーボンフレームにより剛性と軽量性を両立。
エアロプロファイル形状と統合ケーブルルーティングが空力性能を最適化。
HollowGram SystemBarとワイドタイヤクリアランスで快適性と操作性を向上。

 ✅ 40km/h巡航時のCdAが0.0025改善

✅ 風洞試験では約10Wのパワーセーブを実証

これは、特に長距離巡航やタイムトライアル的な走行時において、ライダーの負担軽減に直結するポイントだ。


実走テスト──巡航時のワット効率の比較

実際の走行テストでは、SuperSix EVO LAB71は40km/h巡航時において、従来モデルと比較して10Wのパワーセーブが確認された(図2)。

図2:40km/h巡航時の必要パワー比較

モデル必要パワー(W)速度維持に必要なエネルギー
SuperSix EVO LAB71220W-10W(従来比)
SuperSix EVO Hi-MOD230W
Specialized Tarmac SL8225W-5W
Trek Madone SLR215W-15W

特筆すべきは、Tarmac SL8よりもワット効率が高く、エアロロードのカテゴリーに迫る性能を有している点だ。これにより、SuperSix EVO LAB71は「エアロと軽量の融合」を果たしたバイクとして、新たな基準を打ち立てている。


結論──SuperSix EVO LAB71はエアロロードの新基準となるか?

SuperSix EVO LAB71は、以下のポイントにおいて、従来のオールラウンダーバイクを超える性能を示した。

Delta Steererによるフロント投影面積の削減

エアロシートポストとカムテール形状による抗力低減

 ✅ フル内装ケーブルルーティングによる空力向上

実際の風洞試験および走行テストの結果を見ても、軽量フレームでありながらエアロロード並みの性能を誇ることが証明された。

結論として、SuperSix EVO LAB71は「新世代のエアロオールラウンダー」として、トップレベルの選択肢の一つであることは間違いない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました