パンク修理の常識を変えた「携帯電動ポンプ」
ロードバイク歴が長い人ほど分かると思う。
パンクそのものより、
「空気を入れる作業」
の方が面倒だ。
携帯ポンプは何度でも使える。
しかし28Cタイヤを5気圧以上まで加圧しようとすると、腕力も時間も必要になる。
特にヒルクライムイベントやロングライド終盤。
脚が売り切れた状態で数百回ポンピングする作業は、もはや補給ではなく修行である。
一方、CO2インフレーターは圧倒的に速い。
しかしボンベは使い切り。
失敗すれば終了。
2回パンクすれば予備が必要。
3回パンクすれば、その日は厄年だと思った方がいい。
そこで急速に普及しているのが携帯電動ポンプである。
ボタンひとつで自動加圧。
体力消費ゼロ。
複数回使用可能。
近年のロードバイク用品の中でも、最も実用性が高いカテゴリーのひとつと言っていい。
今回はその中でも注目度の高い2機種を比較した。
- Trek Air Rush
- Cycplus AS2 Pro
携帯電動ポンプ市場の定番AS2 Proに対し、トレックが初参入したAir Rushは本当に戦えるのか。
実測データをもとに検証していく。
今回のテスト環境
まずは条件を統一する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ホイール | Yoeleo Pro C50 |
| 内幅 | 23mm |
| タイヤ | Panaracer Agilist Duro TLR |
| サイズ | 28C |
| 仕様 | チューブレス |
| 目標空気圧 | 5.2bar |
| スタート条件 | 0bar |
今回のテストは、実際のライド中にパンク修理を行う状況を想定している。
つまりカタログスペックではなく、
「現場でどれだけ使えるか」
を検証するテストだ。
サイズと重量はほぼ互角
まず携帯性から見ていこう。
| 項目 | Air Rush | AS2 Pro |
|---|---|---|
| 重量 | 139g | 138g |
| 全長 | 80mm | 約70mm |
| 幅 | 45.8mm | 約47mm |
| 厚み | 35.7mm | 約32mm |
メーカー公称ではAir Rushは108gとなっている。
しかし実測では本体のみ132g。
アダプター装着状態では139gとなった。
一方AS2 Proは138g。
結果として実用状態ではほぼ同重量である。
ここでAir Rushが評価できるのは収納性だ。
仏式・米式アダプターを本体へ収納できる。
ライド中にありがちな
「アダプター紛失事件」
を防げるのは大きなメリットである。
Trek Air Rush電動ポンプ
充填速度対決|勝者はAS2 Pro
携帯電動ポンプにおいて最も重要な性能は充填速度だ。
実測結果を見てみよう。
| 回数 | Air Rush | AS2 Pro |
|---|---|---|
| 1回目 | 1分25秒 | 1分04秒 |
| 2回目 | 1分38秒 | 1分11秒 |
| 3回目 | 1分51秒 | 1分14秒 |
平均充填時間
- Air Rush:約91秒
- AS2 Pro:約70秒
差は約21秒。
割合にすると約30%。
これは決して小さくない。
レース会場やイベントで素早く復帰したい場合、
AS2 Proの優位性は明確だ。
現時点では速度性能でAS2 Proが一歩リードしている。
CYCPLUS AS2PRO 自転車用 電動空気入れ 120PSI 気圧表示 超軽量120g コンパクト 携帯ポンプ 自動停止 米式・仏式バルブ対応
バッテリー性能は意外にも互角
続いてバッテリー性能。
結果は予想以上に接戦だった。
| 項目 | Air Rush | AS2 Pro |
|---|---|---|
| 満充填回数 | 3回 | 3回 |
| 4回目 | 1.15barで停止 | 2.2barで停止 |
どちらも
「28Cチューブレスタイヤを3回フル充填」
できた。
通常のライド環境で考えると十分以上の性能である。
100km超のロングライドでも、1日に3回パンクするケースは極めて少ない。
実運用上の差はほぼないと言ってよい。
発熱と保護制御はAir Rushの課題
今回のテストで最も差が出たのが発熱だった。
Air Rushは3回目の充填中にE01エラーを表示。
内部温度上昇による保護停止が発生した。
これは故障ではない。
安全性を確保するための保護制御である。
しかし事実として、
高負荷連続運転ではAir Rushの方が熱を持ちやすい。
対してAS2 Proは同条件で保護停止なし。
放熱性能やモーター制御の成熟度ではAS2 Proに分がある印象を受けた。
もっとも、ライド中に3本連続で5.2barまで充填する状況は現実的には少ない。
実用上は大きな欠点とは言い難い。
Trek Air Rush電動ポンプ
操作性はAir Rushが優勢
性能以外で大きな差を感じたのが操作性だ。
Air Rushには
- 側面ディスプレイ
- LEDライト
- 見やすい残量表示
が搭載されている。
特に夜間ライドやブルベではLEDライトが便利だ。
また加圧中の圧力確認も容易。
ユーザーインターフェースの完成度はAir Rushが一歩上だと感じた。
価格と保証はAir Rushの圧勝
ここが今回最大のポイントである。
| 項目 | Air Rush | AS2 Pro |
|---|---|---|
| 価格 | 12,900円 | 約17,000円 |
| 保証期間 | 2年 | 約1年 |
| 30日返品保証 | あり | なし |
価格差は約4,000円。
さらにトレック独自の
- 30日満足保証
- 2年間品質保証
が付帯する。
電動ポンプはバッテリーや電子部品を搭載する製品だ。
長期使用を考えると保証の価値は非常に大きい。
この点はAir Rushの大きな武器と言える。
総合評価|性能最強か、コスパ最強か
今回の比較結果をまとめる。
| 評価項目 | 勝者 |
|---|---|
| 充填速度 | AS2 Pro |
| 発熱耐性 | AS2 Pro |
| バッテリー性能 | 引き分け |
| 携帯性 | 引き分け |
| 操作性 | Air Rush |
| 価格 | Air Rush |
| 保証 | Air Rush |
つまり結論は非常にシンプルだ。
最速を求めるならAS2 Pro。
総合満足度を求めるならAir Rush。
確かにAir Rushは速度で負けた。
しかし、
- バッテリー性能は同等
- 携帯性も同等
- 価格は安い
- 保証は長い
- 操作性は優秀
という事実も見逃せない。
だから今回の結論はこうなる。
レース志向ならAS2 Pro
1秒でも早く復帰したいライダー向け。
ロングライド・グラベル・通勤ならAir Rush
価格、保証、使いやすさを重視するライダー向け。
携帯電動ポンプ市場の王者はまだAS2 Proかもしれない。
しかしAir Rushは単なる後発製品ではない。
十分に購入候補へ入る完成度を持った一台だった。


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