ロードバイクのレビューで「軽い、速い、よく進む」と三拍子そろったら、そりゃ気になる。
だが、財布を開く前に一呼吸だ。その「速い」は計測した結果なのか。それとも、新車がうれしくて普段より踏んじゃったのか。人間、買ったばかりの機材には甘い。家族への説明は厳しくても、自分の買い物には大サービスだ。
今回取り上げるのは、ICAN Triaero Flyeeの海外初期レビュー。ペダル・アクセサリーなしで約7.70kgに仕上がり、軽快な乗り味と組み立てやすさが評価されている。
一方で、ヘッド周辺のたわみ、シートポストのずれ、納品時のUDHの締め付け不足も報告された。
購入を検討する上級者が知りたいのは、この両面だろう。自分のポジションを再現できるか。手持ちのパーツで適切に組めるか。そして、走行評価をどこまで判断材料にできるか。 その順に整理していこう。
FLYEE ロードバイクフレーム軽量
初期評価の要点|軽快さは好印象、調整課題は残る

まず、報告内容と評価の範囲を並べておく。
| 項目 | レビューの報告 | 現段階での読み方 |
|---|---|---|
| 完成車重量 | ペダル・アクセサリーなしで約7.70kg | 今回のパーツ構成での数値 |
| 組み立て | T47 BBのねじ加工、内部外観、配線は良好 | 組み付け時の好印象 |
| サイズ感 | M・52cm表記だが54cm相当のリーチ感 | 使用ハンドルを含めた個人の感想 |
| ヘッド周辺 | 強い踏み込みでたわみを感じた | 原因と対策効果は未確定 |
| シートポスト | 6N·m以下ではずれを報告 | 固定条件の確認が必要 |
| UDH | 納品時に締め付け不足があった | 当該個体で確認された事項 |
| 走行感 | 軽く、機敏で、登りたくなる | 比較試験による性能差ではない |
全体としては好意的なレビューだ。ただし、フレーム、ハンドル、スペーサー、変速系統が混ざった完成車の評価でもある。
どこかに違和感があったからといって、全部フレームの責任にしちゃいけない。居酒屋の料理が遅いからって、建物の基礎に文句を言っても始まらないだろ。




約7.7kgの意味|軽さは構成と測定条件で読む
レビュー車の重量は16.98lb。換算すると約7.702kgなので、約7.70kgという表記は妥当だ。
主な構成は次のとおり。
| 部位 | 使用パーツ・仕様 |
|---|---|
| フレーム | ICAN Triaero Flyee・Mサイズ |
| 変速機 | Wheeltop EDS TX・リムブレーキ仕様 |
| ブレーキ | ワイヤー引きハイブリッドディスク |
| ハンドル | Kocevlo一体型・幅36cm |
| パワーメーター | Magene PES515 |
| チェーンリング | QED 50/34T |
| ホイール | Moving Sports Aim One SL 1200 |
レビュアーは、手持ちのパーツを使っており、最軽量を追求した構成ではないと説明している。
それでも、ここから「フレーム単体が軽い」「簡単にあと500g落とせる」とまでは言えない。各部品の実測重量がない以上、軽量化余地を数字で示すことはできないからだ。
また、他車と比較するなら、ペダルやボトルケージ、マウント類の有無をそろえる必要がある。
装備を足した場合の重量は?
仮に、ペダル250g、ボトルケージ2個で60g、マウント類40gを追加すると、計算はこうなる。
| 項目 | 仮定した重量 |
|---|---|
| レビュー時の車体 | 7,702g |
| ペダル | 250g |
| ボトルケージ2個 | 60g |
| マウント類 | 40g |
| 合計 | 8,052g |
これは説明用の仮定で、レビュー車の実測装備重量ではない。それでも、約7.7kgという数字が測定条件によってどう変わるかは分かる。
軽量化の話をするときだけ部品を外して、走るときは全部戻す。そんな都合のいい計量なら、俺だって健康診断の前に腕時計ぐらい外すわ。
サイズ選び|52cmの札より、ブラケットの位置を見ろ
今回のMサイズは52cm表記だが、レビュアーは54cm相当のリーチ感があると述べている。
ただし、これはサイズ換算ではない。「Flyeeの52cm=他社の54cm」と読み替えるのは早計だ。
購入前に比較したいのは、現在のバイクに対してサドルとブラケットをどこへ置けるか。そのためには、フレームのスタックとリーチに加え、コックピットの寸法も見る必要がある。
| 比較する寸法 | 判断したいこと |
|---|---|
| スタック・リーチ | ヘッド上端の位置関係 |
| ステム長・角度 | ハンドルの前後・上下位置 |
| ハンドルリーチ | ブラケットまでの距離 |
| スペーサー量 | ハンドル高と前後位置の調整範囲 |
| サドル位置 | ポジションを比較する基準 |
今回、話をややこしくしているのがKocevloの一体型ハンドルだ。
レビュアーはステム長を110mmまたは120mmと認識していたが、実測では想定より約10mm長い可能性を指摘している。そもそもの寸法が確定していないため、大きく感じた原因をフレームだけに帰属できない。
上級者なら、ブラケット位置が10mm違うという話を「まあ誤差だろ」で流したくはないはずだ。一体型ハンドルではステムだけ交換するわけにもいかず、寸法確認の重みは増す。
サイズ感の報告は、実寸を調べるきっかけに使う。適正サイズを決める結論には使わない。
52という札を信じて買ったら、ハンドルが遠くて毎回お辞儀。自転車に乗っているのか、謝罪会見を開いているのか分からなくなる。

組み立て|T47 BBと配線は好印象
フレームの組み立てについては、全体としてスムーズだったと評価されている。
T47 BBのねじ部分は良好に加工され、内部もきれいに見えたとのこと。ケーブルの取り回しも容易だったという。
フレームから組む人にとって、これは有益な情報だ。ただし、作業がスムーズだったことと、寸法精度や耐久性を測定したことは区別したい。
今回の資料には、BB左右の同軸度や接合面を測定したデータはない。内部外観のきれいさも、積層全体の状態を保証するものではない。
見えた範囲の仕上がりは好評価。それ以上の品質判定は保留。この線引きで十分だ。
無線変速でも、確認する配線と適合は残る
今回の構成では、無線電動変速が組み付けを容易にしたとされる。
ただし、ブレーキはワイヤー引きのハイブリッドディスクだ。変速が無線でも、ブレーキの取り回しまで消えるわけではない。
手持ちパーツを移植するなら、ハンドル内の経路、ブレーキ方式、ヘッド周辺の対応部品を自分の構成で確認したい。
Magene PES515とQED 50/34Tについては、普段のShimano構成より組み付けに手間がかかり、フロント変速も歯切れや滑らかさで劣ったと報告されている。ただし、原因は未確定だ。
チェーンリング、変速機、取り付けや調整などを切り分ける前に、特定の部品へ責任を押しつけることはできない。
ヘッド周辺のたわみ|出力だけで剛性は判断できない
今回、もっとも注意して読みたいのが、ヘッド周辺のたわみだ。
レビュアーは1,000Wを超える踏み込みで変位を感じ、Kocevloのスペーサーの柔らかさや、ハンドルとコラム周辺の組み合わせに言及している。
ここで押さえたいのは、1,000Wという出力から、ハンドルに加わった荷重や構造の剛性を直接判断できないことだ。
例えば、出力とケイデンスから平均クランクトルクを計算すると、同じ1,000Wでも値は変わる。
| 出力 | ケイデンス | 平均クランクトルクの概算 |
|---|---|---|
| 1,000W | 80rpm | 約119N·m |
| 1,000W | 100rpm | 約95.5N·m |
計算式は「トルク=出力÷角速度」。これはクランク側の平均値であり、ハンドルへの荷重を示したものではない。
姿勢や引き手、車体の振り方も不明なまま、「1,000Wでたわむから剛性不足」と結論づけるのは無理がある。パワーメーターに構造試験まで兼業させるなって話だ。
たわみ・ガタ・干渉を分けて確認する
ヘッド周辺の違和感は、現象を分けるところから始まる。
| 現象 | 確認したいこと |
|---|---|
| 荷重時のたわみ | どの部品が変位しているか |
| ガタ | 適合、調整、固定状態 |
| 回転の渋さや接触 | 周辺部品とのクリアランス |
レビューでは、厚さが推定0.6~0.7mm程度のアルミスペーサーを2枚使用したとされる。ただし、寸法は概算で、周辺のクリアランスにも懸念が残っていた。
ICANから厚いCリングが送られる予定だったが、その効果は今回の資料では確認できない。
したがって、現段階で言えるのは、ヘッド周辺に課題が報告され、その原因と対策後の状態は未確定ということまでだ。
購入するなら、使用予定のハンドル、Cリング、スペーサーが適切な組み合わせになるかを確認したい。「金属に替えれば一件落着」と決めつける段階でもない。
シートポストとUDH|固定状態は納品後に確認する
シートポストは6N·m以下ではずれが生じ、カーボンペーストを追加して約8N·mで締め付けたと報告されている。本人によれば、ICANから案内された値だという。
ただし、これはレビュー車での経緯だ。8N·mを、読者の個体にもそのまま使える推奨値として扱うことはできない。
しかも、ペーストの追加と締め付けトルクの変更を同時に行っているため、どちらが保持状態にどれだけ影響したかも、この情報だけでは分からない。
実際の作業では、製品の取扱説明書とメーカーの指示に従い、指定条件で保持できなければ原因を確認する必要がある。
「ずれるなら、もっと締めろ」は豪快だが、判断としては雑だ。気合いで解決するならトルクレンチに目盛りはいらない。
UDHについては、納品時に十分締め付けられていなかったとの報告がある。ブランド全体の品質を断定する材料にはならないが、組み付け時の確認項目としては残しておきたい。
実走評価|機敏な感覚と、速さの証明は分ける
レビュアーは、Flyeeを軽快で機敏、登りたくなるバイクと表現している。
短めのホイールベースと結びつけて説明しているが、操舵感を決める条件はそれだけではない。一般に、ヘッド角、フォークオフセット、トレール、タイヤ、荷重配分なども関係する。
今回の資料には、それらをそろえた比較データがない。
そのため、機敏に感じたという報告は乗り味の参考になるが、高速域の安定性やコーナリング性能まで優れているとは結論づけられない。
つま先と前輪の接触は、自分の仕様で確認したい
停車付近やクリップイン時には、シューズの先端と前輪が接触する可能性も指摘されている。
いわゆるトーオーバーラップだが、ホイールベースだけで決まるものではない。フロントセンター、クランク長、タイヤ外径、シューズ、クリート位置などの条件も関係する。
足の大きい人は特に、自分の構成で確認しておきたい。信号から格好よく発進するつもりが、自分の前輪に止められたら締まらない。敵は向かい風だけじゃなかったのかよ。
登坂性能|PBが出ても機材だけの手柄にはできない
レビュアーはBrimley Roadで過去の登坂タイムと比較する予定だが、今回の資料に結果は含まれていない。
登りで軽快に感じたことは分かる。実際にどれだけ速いかは、これからだ。
重量の影響を考えるなら、まずライダーを含む総質量を見る必要がある。
例えば、ライダー70kg、装備込みのバイク8kgなら、総質量は78kg。そこから500g軽くすると、総質量の減少は約0.64%になる。
さらに、勾配8%、速度15km/hと仮定した場合、500gの軽量化で減る重力抵抗への必要出力は概算で約1.6Wだ。
| 仮定した条件 | 数値 |
|---|---|
| 軽量化量 | 0.5kg |
| 勾配 | 8% |
| 速度 | 15km/h |
| 重力抵抗分の必要出力の減少 | 約1.6W |
これは説明用の計算で、Flyeeと他車の性能差ではない。空気抵抗、転がり抵抗、加速などを含む実走全体の差でもない。
それでも、軽量化を評価するときに、重量だけで話を大きくしないための目安にはなる。出力や風、疲労、ペーシングが変われば、登坂タイムも変わるからだ。
数年前との比較なら、トレーニングによる変化もある。PBが出たら喜んでいい。ただ、フレームに全部の勲章を渡したら、練習してきた脚が怒るだろ。
補給とスポンサー情報|機材評価と混ぜない
元レビューには、スポンサーである補給計画アプリ「Hexis」の紹介も含まれている。
レビュアーは炭水化物摂取量を増やし、練習間の回復やレース当日のエネルギー感に好印象を持ったと述べている。ただし、本人の体験談であり、効果を比較試験で確定した情報ではない。
機材と補給が同時に変わっているなら、走りの改善をバイクだけに帰属することもできない。
これはFlyeeの評価を下げる話ではない。パフォーマンスの変化には複数の要因がある、という整理だ。
軽量フレームに乗っても、乗り手が燃料切れなら進まない。立派な炊飯器を買って、米を入れ忘れている場合じゃないんだよ。
購入判断|自分のポジションと構成で成立するか
今回の初期レビューから見える魅力は、約7.70kgという完成車重量、組み立て時の好印象、軽快な乗り味だ。
購入を検討するなら、その先を確認したい。
| 判断項目 | 購入前に確認する内容 |
|---|---|
| サイズ | 現在のサドル・ブラケット位置を再現できるか |
| ハンドル | 実寸と調整可能な範囲 |
| ヘッド周辺 | 対応部品、クリアランス、対策状況 |
| パーツ移植 | BB、変速、ブレーキ、配線の適合 |
| 固定 | シートポストとUDHの指定条件 |
| 接触 | 使用サイズでのトーオーバーラップ |
| 重量 | 装備を含め、比較条件がそろっているか |
Triaero Flyeeは、軽さと軽快な走行感が魅力として報告されたフレーム。その魅力を自分の一台で引き出すには、サイズ選び、周辺パーツの適合、組み付け状態の確認が欠かせない。
本格的な登坂比較、ヘッド周辺の対策効果、長期耐久性は、今回の資料では判断できない。そこを残したまま評価するのが、初期レビューの正しい使い方だ。
重量計は数字を出してくれる。だが、ハンドルが遠いとも、部品の組み合わせがおかしいとも教えてくれない。
約7.7kgに心が動いたら、次は寸法図と仕様を開こう。財布の開封は、そのあとだ。
FLYEE ロードバイクフレーム軽量


コメント