ロードレースにおいて、エアロダイナミクスの重要性は言うまでもない。TREKは最新のMadone Gen 8で、従来モデルからさらなる空力性能向上と剛性・軽量化の最適化を実現した。本記事では、風洞試験とCFD解析による空力データの詳細分析、最新技術の採用、競合モデルとの比較、上級者向けのチューニング方法までを解説する。
1. 空力性能の進化:CFD解析と風洞試験の実証データ

Madone Gen 8の開発において、TREKはCFD(数値流体力学)解析と風洞試験を駆使し、実走行環境に即した空力最適化を行った。特に、ヨー角(横風の角度)による抗力の変化や、ライダーを含めた状態での流体解析に重点が置かれている。
1.1 CFD解析によるフレーム形状の最適化
従来のエアロバイク設計では、バイク単体の空力特性が中心に検討されていたが、TREKはCFD解析でライダーのポジションやウェアの影響まで考慮し、実際のレースシーンにおける空力抵抗を精密にモデル化した。

解析条件
• 速度設定:40km/h・60km/h
• ヨー角範囲:0°~20°
• 計算手法:RANS(Reynolds-Averaged Navier-Stokes)モデル
• メッシュ精度:5000万以上の要素を使用
この解析結果に基づき、KVF(Kammtail Virtual Foil)形状の最適化やIsoFlowテクノロジーの改良が施され、空力抵抗の低減につながった。
1.2 風洞試験の実測データ
開発されたプロトタイプは、米国のSan Diego Low-Speed Wind Tunnelで風洞試験が行われた。その結果、前世代のMadone Gen 7と比較して最大10Wの空力抵抗削減が確認された。


風洞試験データ(ヨー角別の抗力比較)
速度 | ヨー角 | Madone Gen 8 (W) | Madone Gen 7 (W) | 抵抗削減 |
40km/h | 0° | 210 | 220 | -10W (-4.5% |
40km/h | 10° | 215 | 225 | -10W (-4.4%) |
0km/h | 5° | 275 | 285 | -10W (-3.5%) |
特に、ヨー角5°~10°の範囲での抗力低減が顕著であり、実際のレース環境下での巡航性能向上が期待できる。
2. 採用された最新技術とコンポーネント
2.1 800 Series OCLV Carbon の採用

Madone Gen 8のフレームには、TREKの最先端カーボン素材「800 Series OCLV Carbon」が採用されている。従来の700 Series OCLVよりも約30%の強度向上を実現しつつ、同等の剛性を維持している。これにより、フレーム重量は約7%軽量化され、剛性と快適性のバランスが向上した。
2.2 改良型IsoFlowテクノロジー

Madone Gen 7で初めて導入されたIsoFlow(シートチューブの空洞構造)がさらに進化。形状の最適化により、40km/h走行時で3Wの空力向上が確認された。加えて、ダウンフォースの発生により、高速域での直進安定性も向上している。
3. 競合モデルとの比較:Tarmac SL8 vs. Madone Gen 8
TREK Madone Gen 8のライバルとして、Specialized S-Works Tarmac SL8が挙げられる。両モデルを比較すると、Tarmac SL8は軽量性に優れ、Madone Gen 8は空力性能に優れるという違いがある。
項目 | Madone Gen 8 | Tarmac SL8 |
空力性能(40km/h, 0°) | 210W | 212W |
フレーム重量 | 約980g | 約920g |
剛性剛比 | 高 | 非常に高 |
快適性 | 中 | 高 |
Tarmac SL8は登坂性能や加速性に優れるが、高速巡航性能ではMadone Gen 8が優勢だ。
4. 上級者向けメンテナンス・チューニング
4.1 内装ケーブルの最適化
Madone Gen 8は完全内装ケーブルルーティングを採用しており、空力性能は向上しているが、整備性にはやや注意が必要だ。

- • ヘッドセットのグリスアップ:摩擦抵抗を抑え、ハンドリングをスムーズに保つ
- • Di2・eTapの調整:シフトレスポンス向上のため、適切なテンション調整を行う
4.2 ホイールとタイヤの選択肢
標準装備のBontrager Aeolus RSLホイールは空力性能に優れるが、用途に応じてホイールを選択するとさらなる最適化が可能。
用途 | 推奨リムハイト | 推奨タイヤ幅 |
---|---|---|
TT・トライアスロン | 80mm以上 | 25mm |
クリテリウム | 50mm前後 | 28mm |
ロングライド | 45mm前後 | 30mm |
特に、低圧運用(5.5~6.0bar)による転がり抵抗の最適化が、実走行でのフィーリング向上につながる。
5. 結論:Madone Gen 8は上級者に最適な選択肢か?
TREK Madone Gen 8は、最先端のエアロダイナミクス技術と最新のカーボン技術を融合したトップレーシングマシンだ。
✅空力性能の向上:風洞試験で最大10Wの抗力低減を実証
✅軽量&高剛性:800 Series OCLV Carbonによる最適化
✅スプリンター向け設計:高速巡航時の安定性と剛性感の強さ
特に、スプリントや高速巡航を重視するライダーにとっては、現時点での最良の選択肢となるだろう。Madone Gen 8は、エアロロードの新基準を打ち立てる一台として、確実に上級ライダーの期待に応えてくれるはずだ。





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